” 村田氏 ” は今宵も指定席でシングルモルトウヰスキーを飲んでいた
グレンリベットをオンザロックで時間をかけてゆっくりやる 彼のスタイルだ
そこへ見覚えのある一人の女性が来店された
カウンター席の真ん中に座る
お客様は2人だけ 小声で声をかけてみた
『しおりさん よろしければこちらの席で御一緒しませんか』
「? はい・・・」 隣の席に置いたバッグを再び肩にかける
『村田さん 御一緒してもよろしいですか』
「え、あ、どうぞ」 カバンを足元によける
しおりさんが隣に座る
「失礼します しおりと言います」
「村田です よくこられるんですか?」
「いえ まだ数えるほどです 常連さんですか?」
「ちょこちょこお邪魔させてもらっています」
挨拶が一段落したところで御声をかける
『メニュー要りますか?』
「ううん」首を横に振る
「マッカランを」
「え、ウヰスキー飲まれるんですか?」 村田氏は少し驚いた様子だ
「ええ・・・ほんの少しだけ・・・」 チラッと私の方を見る・・・
反応したつもりはないのだが・・・一瞬笑ってしまったのかもしれない
「なによ」
「あーっ この人酷いんですよ 聞いて下さい」
「初めて来店した次の日、スーパーの駐車場であったのに憶えてないんですよ」
「それは酷いですね 1杯目はマスターのおごりですね」
とんだ藪蛇だった
「冗談ですよ 私につけて下さい 私がおごります マスターも何かお好きなものをどうぞ」
『後悔しますよ』 思わず呟いてしまった
「何を後悔するのよ」
「ね ひどいでしょ このお店」
『お言葉に甘えて私はミラーを頂いてもよろしいでしょうか』
「どうぞ」
3人で乾杯した
村田氏の心遣いが嬉しかったし
たびたび来店してくれるようになった ”しおりさん” の笑顔が凄く眩しくて嬉しかった
小悪魔のようだったが・・・
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