カウンター席の真ん中でカップルが静かにハイネケンを飲んでいた
私を合わせて店内には3人
気の利いたバーテンダーなら自ら話しかけて自然と打ち解けるのだろうが・・・
元々人付き合いは苦手な方だ
ましてカップルなら私がいると邪魔になるかもしれない
自然に声を掛けられるまでは様子を見ることにしている
我ながらこんな人見知りな性格でよくショットバーをやっていると思う
いつもの端っこで音楽をかける
Soulやフュージョンをかけてみる
反応がない
どういった曲を好むのだろう
暫くJAZZで様子を見ることにした
時折笑い声が聞こえてくる
ジョッキにはまだハイネケンが残っている
2人ともチャームには手を付けていないようだった
夫婦だろうか とても落ち着いているように見える
目があった 男性が手で合図する
『何か御作りしましょうか』
「やっとこっち振り向いてくれましたね」
「くれましたね」
2人とも人懐っこい笑顔だった
『すいません 気付かずに失礼いたしました』
どうやら私が振り向くのをずっと待ってくれていたようだ
時折見ていたつもりなのだが私の方が気付かなかったようだ
申し訳がない
「ハイネケン下さい」
「同じく」
『かしこまりました』
冷えたジョッキを取り出そうとした時だった
二人が同時に空になったジョッキを両手で差し出した
「これにそのまま」
「そのまま注いでください」
『でも…』
「お願いします」
「お願いします」
思わず笑ってしまった
絶対夫婦だと確信した ここまで行動が同じとは
その後 1時間ほど私まで楽しく過ごさせてもらった
また来店してくれるだろうか
人と話すきっかけなんてこんなものだ