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腕相撲

静かな夜だった

ドアが開き 一人小太りの年配の男性がカウンター席の真ん中に座った
ビールを頼むと質問攻めにあった

「ここのオーナーは誰だ」
『私ですが』
「お前ひとりか?」
『はい』
「他にいないのか? 女のバーテンは?」
『申し訳ございません 私一人だけです』

こんな店でもバーだということは認識してもらえているようだ

いきなり腕を捲り上げた

「どうだ この上腕二頭筋 この筋肉」
『ポパイみたいですね かなり鍛えてらっしゃるようで』

苦笑いするしかなかった・・・

すると空手の型のような仕草をしたかと思ったら腕相撲の格好に入った

「うちの若い看護師には負けたことがない」
「どうだ」

丁重にお断りした

どうやら病院の院長先生のようだ
看護師さんも気を遣って大変だなと思わずにいられなかった

「先生が勝つにミラー1本」

暇を持て余していた りえさんが横から割り込んできた
こういう場面では悪女に変わる・・・

結局腕相撲をする羽目になってしまった

2秒持たずに負けた

こういうのは熱くなると酷なことがない
ミラーを開け りえさんの目の前に置く

「どうだ もう一番」

『いえ 結構です 腕が筋肉痛です』

が、彼はしつこかった・・・

「先生が勝つにミラー1本」

りえさんもしつこかった・・・

結局もう一番勝負する羽目に
が、院長先生はあまりにも傲慢すぎた・・・

『今度は負けませんよ』

もう会うこともないかもしれないし職員でもないのだから気を遣うのはやめよう
そう思いながら大人げもなく本気を出してしまった

年下相手に余程悔しかったのか院長先生はビール一杯で帰ってしまった

「お相子ですね」
そう言って りえさんの目の前のミラーを取り返し飲んだ

「ガキね」

聞こえないふりをした

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