2月の寒い日 私用で出かけた
高速に乗る 遠出するのは久ぶりだ 夜型なので普段は寝ている時間だ
用事が全て終わり帰路に就く頃
急に海が見たくなった
平日の昼間
たまにすれ違う車はダンプカーやピックアップトラックが多い
自分の前を走る車はない 後ろを走る車もない
この時期の海は風が吹き荒れる
小雨が降ってきた
トンネルを抜けた瞬間どんよりとした灰色の海が目の前に広がった
荒々しく岩に打ちつける波
雨なのか波しぶきなのか細かい水滴がワイパーを濡らす
ビーチ入口にはロープが張り巡らされていた
車を止め歩いてみる
人っ子一人いない
あるのは波と風の音だけだった
今この瞬間 現実の世界から全ての人が消えた
360℃ 見渡す限り この世界で私一人だった
砂浜を歩いてみた 砂にめり込む足音が響く
漂流物が多い 岩には青緑色の藻が広がっている
遠くに小さな島が見える
空は灰色 モノクロームの世界だ 霧のような雨が辺りを覆いつくす
振り返ると砂浜には私の足跡だけがくっきりと続いている
辺りを探索した
夏のビーチとは違う顔を見せる
人の手が入らない自然のままの姿
暫くの間 この世界 一人っきりの時間を思う存分楽しんだ
誰もいない冬の海 現実逃避するにはもってこいだ
灰色の世界 嫌いじゃない