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1年後・・・

一組の男女が私の立つ目の前のカウンター席に座った

常連客以外のお客様がここに座るのは珍しい

理由はBGMをかける為常に私がいるからだ
普通は邪魔だと思うことだろう

メニューを渡す時ふと思った

女性の方に見覚えがあった
確かに以前お見えになっている
記憶に残っている

だが思い出せない・・・
ここまで気になるのは何故だろう・・・

「この赤ワインを下さい」

一瞬にして記憶が甦った

一年前同じ席で赤ワインを飲んでいた方がいた
その時は女性同士2人でボトルワインを1本飲まれていた

彼女たちが帰った後に気づいた
グラスには大量の澱が残っていた

熟成されたものとは違い若い赤ワインだったのだが・・・
あまりにも大量だったため覚えていた

ワインを開けグラスに注ぐ
残りをワインクーラーに入れ傍に置いた

オーダーは他にスモークサーモンのカルパッチョ
これも1年前と同じだった

一段落した後
急いでその日の日記を探す

・・・あった
記憶通りだった

男性が席を外した時女性にさりげなく聞いた

『ワインがお好きなのですか?』
『前回いらしたときもボトルの赤ワインだったと記憶しているのですが・・・』

「アハハ! 覚えてました? ワイン好きなんですよ~」
「もう一人の同僚もワイン好きなので」
「私達 迷惑かけてませんでしたか?」
そう言うといたずらっぽく笑った

『いいえ』

間違いない
あの日の女性だ

2人がお帰りになるお会計時に1年前の話をした

流石に引くかもしれないと思ったが
丁寧にお詫びし
ずっと封筒に入れて置いた当時の代金を返金した

女性は受け取れないと言ったが
男性の方が気を使ってくれて受取る様促してくれた

1年も前のことだ 気にもしていなかったかも知れない
私の方はずっと心に引っ掛かっていたのが取れてスッキリした

一年後また来てくれるだろうか・・・

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