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やっぱり親子だな

お客様はハーフのような落ち着いた雰囲気の女性が一人だった
カウンター席の真ん中に座る
堀の深い端正な顔立ちからはただならぬオーラが漂っていた

「コロナを」
「マスターも1杯お好きなのをどうぞ」

女性がコロナの上にのったライムを絞りそのまま瓶の中に落とす
手慣れたものだ グラスには手も付けない

お言葉に甘えてミラーを頂いた 軽く乾杯
聞くと近くでスナックをやっているとのこと
常連客から” Basil ”の事を聞いたと言う

どうやら共通のお客様がいらっしゃるようだ
夜の商売同士色々な話をしている時に一人の女性が入って来た

『いらっしゃいませ』

ナナさんだった
彼女の指定席はカウンターの真ん中の席 全てのボトルが見渡せる席だ
そこには先客のハーフのような女性が座っている

仕方なく端っこに腰掛けようとして止めた
真ん中の指定席のこちらの方へ向かって来る

「なんであんたがここにいるのよ」

「あなたに関係ないでしょ」
ハーフの女性は見向きもせず答える

「ここには来るなって言ったよね」

「悪いわけ?」

ナナさんの顔が紅潮していくのが暗闇の中でも分かった
ハーフの女性は正面を向いたままだ
訳が分からずに固まっていると

「バカ娘がいつも大変お世話になっております」
そう言って頭を下げた

「バカは余計だよ」
そう言うとナナさんは出ていった

どうやら二人の関係は親子のようだ
些細な事で喧嘩したらしい 気分直しに来店したとのことだった
気品に満ち溢れた女性はすっかり母親の顔に代わっていた
娘の無礼を謝りお礼を言って帰られた

閉店間際電話が鳴った ナナさんだ

「お母さん まだいますか?」
『いえ もう帰られました』
「これから寄ってもいいですか・・・」
『はい お待ちしております』

流石親子だと思った
尤も母親の方が一枚上手のようだが
気の強さも似ているが行動パターンが読まれている
電話を置きながらつい微笑んでしまった

帰り際に母親がひとこと言ったことを思い出していた

「ナナ 戻って来るのでよろしくね」

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